栃木市で実践する生涯を見据えた予防中心の歯科医療

口腔機能発達不全症

口腔機能発達不全症

これまでの歯科医療は虫歯や歯周病といった「歯の病気」を治すことが中心でした。
しかし、私たちはそれと同じくらい、あるいはそれ以上に重要なことがあると考えています。
それは「お口の機能」が正しく働いているかどうかです。
「食べる」「話す」「呼吸する」。
これらは人間が生きていく上で欠かせない基本的な機能です。
近年、これらのお口の機能が年齢相応に育っていないお子様や加齢とともに機能が衰えてしまう成人が増えています。 当院では歯の形だけでなく、お口の働き(機能)を診ることで生涯にわたる全身の健康をサポートします。

口腔機能とは

生きる力を支える3つの柱

歯科医院は単に歯を削ったり詰めたりするだけの場所ではありません。
お口は体の中に栄養を取り入れ、言葉を発し、呼吸をするための入り口です。 これらの機能が正常に働いてこそ、人は健康で豊かな生活を送ることができます。
当院が重視する「口腔機能」とは主に以下の3つを指します。

咀嚼(そしゃく)・嚥下(えんげ)機能
食べ物を歯で細かく噛み砕き、唾液と混ぜ合わせて飲み込みやすい形にし、喉から食道、胃へと送り込む一連の動作です。
これが正しく行われないと栄養の吸収が悪くなるだけでなく、窒息や誤嚥(ごえん)のリスクが高まります。 また、しっかり噛むことは脳への血流を促し、発育や認知機能の維持にも寄与します。
発音(はつおん)・構音(こうおん)機能
舌や唇、頬の筋肉を複雑に動かして言葉を話す機能です。
お口の機能に問題があると滑舌が悪くなったり、特定の音が聞き取りにくくなったりします。
コミュニケーションを円滑に行うために不可欠な機能です。
呼吸(こきゅう)機能
意外に思われるかもしれませんが、呼吸もお口の環境と密接に関係しています。
本来、人間は「鼻呼吸」をする動物です。
しかし、お口周りの筋肉が弱いと口が開きっぱなしになり、「口呼吸」になってしまいます。 口呼吸は感染症のリスクを高めたり、歯並びを悪化させたりする諸悪の根源です。
正しい鼻呼吸を獲得することは歯科医療の重要なテーマです。

口腔機能発達不全症について

増え続けるお子様たちの問題

増え続けるお子様たちの問題

・「食べるのが遅い」
・「クチャクチャと音を立てて食べる」
・「いつも口がポカンと開いている」
・「発音がはっきりしない」
お子様にこのような様子が見られる場合、「口腔機能発達不全症」の可能性があります。
これは15歳未満(主に成長期)
のお子様において、食べる・話す・呼吸するといったお口の機能が年齢相応に獲得できていない、あるいは獲得が遅れている状態を指す病名です。 2018年より保険適用された比較的新しい概念ですが、現代のお子様たちの間で急速に増えています。
原因としては柔らかい食事が増えたことによる噛む回数の減少や、スマートフォンやゲームの普及による姿勢の悪化、生活環境の変化などが挙げられます。

放置することのリスク
「そのうち治るだろう」と軽く考えるのは危険です。
口腔機能の発達が不十分なまま成長すると以下のような深刻な問題を引き起こします。
歯並び・顔貌の悪化
お口が常に開いていると唇が歯を押さえる力が弱まり、出っ歯や受け口になりやすくなります。
また、舌の位置が下がることで上顎が広がらず、ガタガタの歯並び(叢生)の原因となります。 顔の筋肉が正しく使われないため、しまりのない顔つきになることもあります。
全身の健康への悪影響
口呼吸になると冷たく乾いた空気が、細菌やウイルスと共に直接喉や肺に入り込みます。
その結果、風邪やインフルエンザにかかりやすくなったり、扁桃腺が腫れてアデノイド肥大を引き起こしたりします。 また、酸素の摂取効率が悪いため脳に十分な酸素がいかず、集中力の低下や睡眠の質の低下(いびき・睡眠時無呼吸)を招きます。
胃腸への負担
よく噛まずに飲み込む癖がつくと消化器官に負担がかかり、栄養の吸収効率が下がります。
肥満や、逆に痩せすぎの原因になることもあります。

ご家庭でできるチェックリスト

お子様に以下のようなサインはありませんか。 一つでも当てはまる場合は口腔機能の発達に問題がある可能性があります。

  • テレビを見ている時などに口がポカンと開いている
  • 食事中にクチャクチャと音を立てる
  • 食べ物を飲み込む時に首を動かしたり、顔をしかめたりする
  • 硬いものを嫌がり、柔らかいものばかり好む
  • 食事に時間がかかりすぎる、または早食いである
  • 飲み物を飲む時、舌を突き出す癖がある
  • いびきをかく、寝ている時に口が開いている
  • サ行やタ行の発音が不明瞭である
  • よだれが多い

当院の診断とアプローチ

食べる・話す・呼吸する力を育てる

当院では一般歯科や小児歯科の診療の中で、常にお子様の「機能」に目を向けています。
虫歯のチェックだけでなく、お口の機能が正しく育っているかを検査し、問題があれば早期に対応します。

専門的な検査による診断

視診だけでなく、必要に応じて専門的な検査を行います。
「口唇閉鎖力検査(唇を閉じる力の測定)」や「舌圧検査(舌の力の測定)」などを行い、同年代の平均値と比較して機能が十分に発達しているかを客観的に評価します。
データに基づいて診断を行うことで、どの部分のトレーニングが必要かを明確にします。

MFT(口腔筋機能療法)の実践

機能改善の中心となるのがMFT(Oral Myofunctional Therapy)と呼ばれるトレーニングです。
これは舌や唇、頬などの口腔顔面筋の機能を改善し、正しいバランスを取り戻すための訓練です。
専門的な知識を持った歯科医師や歯科衛生士がお子様の年齢や状態に合わせたプログラムを組み、指導します。

トレーニングの例

スポット: 舌の先を置く正しい位置(上顎の前歯の後ろ)を覚える訓練。
ポッピング: 舌全体を上顎に吸い上げて、ポンと音を鳴らす訓練(舌を持ち上げる力を鍛える)。
ボタンプル: 唇でボタンについた紐を挟み、引っ張り合う訓練(唇を閉じる力を鍛える)。
ガムトレーニング: ガムを使って正しく噛み、丸めて、上顎に押し広げる訓練。
これらのトレーニングは歯科医院で行うだけでなく、ご自宅でも毎日継続していただくことが重要です。
遊び感覚で楽しく続けられるよう、スタッフがサポートします。

食事指導・生活習慣の改善

トレーニングと並行して日常生活の見直しも行います。
食事の際の姿勢(足の裏を床につける)、食材の大きさや硬さの工夫、一口の量、水分の摂り方などを指導します。 「よく噛みなさい」と言うだけではお子様はどうすればいいか分かりません。
「前歯で噛み切る料理を出す」「食事中は飲み物を置かない」といった自然と噛む回数が増える環境づくりをアドバイスします。

小児矯正との連携

機能と形態は表裏一体

機能と形態は表裏一体

お口の機能(働き)と歯並び(形)は密接に関係しています。
機能が正しく育っていないと歯並びが悪くなり、歯並びが悪いと機能がさらに低下するという悪循環に陥ります。 当院では口腔機能発達不全症の治療と、小児矯正治療(Myobraceなどの育成矯正)を切り離して考えてはいません。
機能を改善することが結果として歯並びを良くすることにつながり、矯正治療の効果を高め、後戻りを防ぐことになります。 当院には小児歯科専門医や矯正医が在籍しており、機能と形態の両面からお子様の成長をサポートする体制が整っています。
0歳からの関わりを通じて将来矯正治療が必要ない、あるいは最小限の介入で済むような健康なお口を育てることが私たちの目標です。

鼻呼吸は大切です

すべての世代に共通する健康の要

お子様から大人まで、すべての世代において強調したいのが「鼻呼吸」の重要性です。
お口は本来、食事と会話のための器官であり、呼吸器ではありません。 口呼吸をしていると以下のようなデメリットがあります。
免疫力の低下: 鼻のフィルターを通さずに外気が入るため、病原菌が直接侵入します。 口腔内環境の悪化: 口の中が乾燥し、唾液の作用が弱まるため、虫歯、歯周病、口臭が悪化します。
歯列不正: 舌や頬の圧力がアンバランスになり、歯並びが乱れます。 当院では「あいうべ体操」などの口呼吸改善トレーニングを推奨しています。
鼻呼吸を習慣化することはお口だけでなく、全身の健康を守るための最も基本的かつ効果的な予防法です。

機能を見守るかかりつけ医として

機能を見守るかかりつけ医として

歯が痛くなくても、お口の機能に不安がある場合は遠慮なくご相談ください。
「うちの子、いつも口が開いている気がする」
「最近、食事中にむせることが増えた」
そのような些細な気づきが早期発見・早期対応につながります。
早乙女歯科医院は単に歯を治すだけでなく、患者様が一生涯を通じて「美味しく食べ」「楽しく話し」「元気に笑う」ことができるよう、機能の面からも全力でサポートいたします。
0歳のお子様からご高齢の方まで、地域の皆様の「生きる力」を支える歯科医院であり続けます。

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